陸前高田ベースの木下研究員の研究が日本藻類学会の和文誌『藻類』にミニレビューとして掲載されました。タイトルは「緑藻と海洋細菌の相互作用:ヒトエグサの陸上養殖技術と養殖産業」です。緑藻と海洋細菌がどのように互いに作用し合い、生長や形態形成に影響を与えるか深堀し、養殖産業への応用可能性についても触れました。最新の研究動向と今後の展望を紹介しています。
これまで海藻の種苗生産技術開発では、海水中に生育する細菌の役割についてあまり注目されていませんでした。しかし、近年の研究によって、海水中に生育する特定の細菌が海藻の生長を支える重要なパートナーであることが明らかになりました。
海藻の表面には、多くの細菌が共生しています。私たちは、海水中に生育する細菌約100種と海藻ヒトエグサを共培養することで、海藻に対して、1)細胞分裂の促進、2)細胞壁形成および仮根伸長(葉状化を誘導する)など異なる作用をもつ細菌種を発見しました。発見に基づいて、細菌と緑藻ヒトエグサとの共培養を行い、ヒトエグサ陸上養殖のための種苗生産技術を開発しました。
これまで、異なる作用をもつ海洋細菌を組み合わせて利用し、海藻の増殖発生を制御し、種苗生産に応用できた事例の報告はありませんでした。
細菌と海藻との共培養による海藻生産という、まったく新しい研究分野としての第一歩を踏み出した事になります。
今回のミニレビューが、藻類研究の発展や多くの方々の興味を引く一助になればと願っております。今後も研究を通して養殖産業の発展に貢献してまいります。