当社原料事業部のマキヒトエ(一般名称:ヒトエグサ)に関する論文が国際学術雑誌CYTOLOGIAに掲載されました。
緑藻のマキヒトエやアオサは正常な形態形成に海洋細菌が産生する物質サルーシン(thallusin)が必要であることが知られていますが、そのメカニズムは十分に理解されていません。本論文では、無菌培養したマキヒトエを3種類の細胞(生殖細胞、葉身細胞、仮根細胞)に分けて培養し、形態形成過程および分化パターンを観察しました。その結果、生殖細胞と葉身細胞は細胞分裂能力と分化全能性を有していることがわかりました。一方、仮根細胞は、細胞分裂することなく伸長することがわかりました。thallusinは、細胞分裂および細胞分化に影響を与えず、生殖細胞のような未分化な状態にある細胞において正常な形態形成を可能にすると考えられました。これらの結果に基づき、陸上養殖に必要なヒトエグサ種苗生産の技術基盤を確立しました。今後は、本研究の成果を活かして、様々な海藻の養殖技術に応用することで、生産性の向上が期待できます。本稿の内容は、JST-OPERA「低CO2と低環境負荷を実現する微細藻バイオリファイナリーの創出」における東京大学・高知大学との共同研究プロジェクトによるものです。
著者名
Yutaro Kinoshita, Yoichi Sato, Tetsuya Sakurai, Tomohito Yamasaki, Hirofumi Yamamoto, Masanori Hiraoka
雑誌名
CYTOLOGIA
87(1): 17-22